食物栄養学科で「ウイルス研究」!?
——牛の遺伝子が教えてくれる、
感染症と「食の安全」のひみつ
「同じウイルスに感染しても、発症する牛と発症しない牛がいる。なぜ?」 ——その問いを入口に、世界規模のサンプル解析、ワクチン開発、One Health の視点まで。食卓と感染症の意外な関係を、 ゲノムレベルで解き明かす研究室です。
竹嶋研究室ってどんなところ?
竹嶋研究室では、ウシ伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)とウシ主要組織適合遺伝子複合体(BoLA)をモデルに、 「なぜ同じウイルスに感染しても、発症する牛と発症しない牛がいるのか」 という素朴で奥深い問いに取り組んでいます。
BoLA-DRB3 多型の世界規模解析や、超高感度検査法「BLV-CoCoMo-qPCR」、 ウイルス様粒子(VLP)ワクチンの開発を通じて、現場で使える感染制御戦略の 構築を目指しています。さらに、BLVのゲノム組込み部位の解析や、 ヒトへの感染リスク評価まで、One Health の視点から 「家畜の健康」と「人の食と健康」をつなぐ研究を展開しています。
研究テーマ
同じウイルスなのに、なぜ違う?「個体差」を遺伝子から解き明かす
同じBLVに感染しても、ウイルス量や発症リスクは牛ごとに大きく違います。私たちは「宿主側の遺伝子(BoLA-DRB3)」に注目し、感染症の "個性" の正体を解析しています。
世界中の牛からウイルスを追跡!国際共同で挑む分子疫学
世界各地のBLV流行状況と遺伝子型の分布を調査。南米のフィールド試料から新たな「第9遺伝子型」を発見するなど、国際共同研究をリードしています。
自分たちで開発!次世代の検査キットとワクチン
超高感度な定量法「BLV-CoCoMo-qPCR法」や、感受性の高い牛をターゲットにした「VLP(ウイルス様粒子)ワクチン」など、現場で本当に使える感染制御技術を開発しています。
ウイルスはどこに「住みつく」?がんが生まれる起点を探る
プロウイルスがゲノムのどこに組み込まれるかを網羅的に解析。リンパ腫発症に関わる宿主遺伝子クラスターを発見するなど、がんの発症メカニズムに迫ります。
「家畜の健康」と「人の食」をつなぐ — One Health 研究
日本のヒト検体ではBLV感染の証拠は見られないことを報告するなど、獣医学と公衆衛生・栄養学を橋渡しする One Health の視点で「食の安全」を見つめます。
竹嶋ラボで身につくこと・出会えるもの
「食物栄養学科でウイルス研究?」と驚かれることもありますが、 「食」と「感染症」は、One Health の視点で見れば、地続きの世界です。 竹嶋研究室で過ごす時間で、こんな経験ができます。
竹嶋ラボの「ここがユニーク」
- 世界とつながる国際共同研究南米・アジア・欧米の研究機関と連携し、世界規模のサンプルで研究を進められる環境。グローバルな視点が自然と身につきます。
- 最先端の分子生物学・ゲノム解析リアルタイムPCR、次世代シークエンサーを使ったゲノム解析、組換えタンパク質を用いたワクチン開発まで、研究の "現場の手技" を体験できます。
- One Health の横断的な学び獣医ウイルス学 × 公衆衛生 × 食物栄養学。「食卓」と「感染症」を一本の線でつなぐ、ここでしかできない学際的なアプローチ。
- 「なぜ?」を科学する観察眼同じ条件でも結果が違う——その「?」を放置せず、データで「!」に変える。研究者の基本姿勢が、自然と身につきます。
なぜ同じウイルスに感染しても、
発症する牛と発症しない牛がいるのか?
教員紹介
竹嶋 伸之輔(Takeshima Shinnosuke)
十文字学園女子大学 人間生活学部 食物栄養学科・教授
人間生活学部 学部長 / 食物栄養学科 学科長
専門分野: 獣医ウイルス学, 動物遺伝学, 免疫学
担当科目: 解剖生理学, 病原物質・微生物学 など
代表的な論文
- BoLA-DRB3とBLVプロウイルス量の関連 (Retrovirology, 2019): 全国調査により、BLVプロウイルス量がBoLA-DRB3多型と強く関連することを示した研究。
- BoLA-DRB3多型とリンパ腫・プロウイルス量 (Viruses, 2020): BLV誘発リンパ腫とプロウイルス量の双方に関わるBoLA-DRB3多型を解析した論文。
- 南米における新規BLV遺伝子型(genotype-9)の同定 (Retrovirology, 2016): 全ゲノム解析から新たなBLV第9遺伝子型を報告し、BLVの進化と国際的な理解を更新した研究。
- BLV組込み部位とリンパ腫関連遺伝子クラスター (Int. J. Mol. Sci., 2025): BLV誘発リンパ腫の分子機構に迫った最新成果。
- 日本人検体におけるBLV感染の検討 (Retrovirology, 2022): 日本におけるBLVとヒト疾患の関連は現時点では支持されないと結論づけた研究。